319人が本棚に入れています
本棚に追加
「シェリル博士ですね?」
廊下に出た途端に目に入った男。白衣だらけの場所なのに黒スーツ、言われなくとも案内人だと分かった。
「私を博士と呼ぶな」
「失礼しました。お荷物は・・・」
「自分で持てる」
「了解」
・・・同類のニオイがする。無表情、無関心。恐らくだが、この男も諜報部員だと思う。
廊下を歩き、扉をくぐり抜け、再び廊下を歩き、再び扉をくぐり抜ける。サビのある鉄格子のエレベーターに乗り込むと地上に向かって行った。
エレベーターが止まると、男は突き当たりの部屋に行けと言い残して再び地下へと下りて行った。
・・・眩しい。ただその一言につきる。太陽の光が窓から差し込み、自然に出来たそよ風が頬を撫でる。アメリカの家、ホワイトハウスが見下ろせる高所、ホワイトハウスとは正反対の真っ黒なビルだ。まるで言わずもがな裏の政治を行っていると思わせている。
昼間の世界はなんと眩しいのだろうと思いながらも憧れは抱かない、ただ眩しいだけの世界だと突き放して見つめる窓の外。自嘲笑いさえ浮かぶ中、静かに突き当たりの扉に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!