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静かな廊下にけたたましく鳴り響くノック、地上の薄い扉であるが故の現象だ。
『誰だ』
扉の向こうから聞こえた声には聞き覚えがある。
「依頼人を引き取りに来た」
名前を言わずも扉が開く、やはり相手はラーディ主任だった。
「どうだ、昼間のワシントンは」
「いつもながら偽善の家が気に食わないな」
「いっそ黒く塗って来れば良いのに」
「仕事なら塗ってやる」
「相変わらずだな」
「昨日会って言うセリフじゃないだろ」
「確かに・・・。入れ、依頼人も中だ」
白く特殊な素材感を持つ床、天井の端には必ず防犯カメラが備え付けてある。
部屋には個室が3つほどある、その一つの扉の前でラーディ主任は振り向いた。
「気を付けろ」
「お前はいつも断片的な話し方だな、それだけじゃ分からないだろ」
「護衛と言うより、お前は依頼人の監督者だ。騙されて逃げられたり殺されたりしないようにな」
「あぁ、指令書に書いてあった」
「それと」
「まだあるのか」
「最後だ、しっかり覚えておけ。干渉はするな、余計な事に首をつっこむな。それさえ守れば危険は無い」
「分かった」
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