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扉に一歩近づいたのに引き止められる、昔と重なる感覚は心拍数に影響を及ぼしてくる。
「何かあったら連絡しろ、無理する必要は無い」
「最後じゃなかったのか」
「真剣に聞け、上司としての命令だ」
頭に熱い気持ちが上って来るのを必死に押さえつけた。しかし既にラーディ主任の襟首を掴んでしまっている。静かな視線が頭を冷やしていく、自分のしている行動が理解出来なくなってきた。
「放せシェリル、皺が出来るだろ」
乱暴が少々見える放し方、息切れする理由なんて考えたくもない。ゆっくりと手のひらでしかめた顔をほぐした、目が異様に熱を持っている。
「私はお前に助けなど求めない」
睨み付けたのに表情を変えない、相変わらず人の気持ちをかき乱すのが上手い奴だ。
「すまなかった」
「謝るなと言っただろ、全て今更な事だ。それと、私に上司面するな」
「・・・お前が助けを求めなくても俺は助ける、上司じゃない立場でな」
「勝手にしろ、偽善者め」
ラーディ主任を押し退けて自分から扉を開いた。
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