~第三幕~ 手遅れの謝罪

5/9
前へ
/288ページ
次へ
扉に一歩近づいたのに引き止められる、昔と重なる感覚は心拍数に影響を及ぼしてくる。 「何かあったら連絡しろ、無理する必要は無い」 「最後じゃなかったのか」 「真剣に聞け、上司としての命令だ」   頭に熱い気持ちが上って来るのを必死に押さえつけた。しかし既にラーディ主任の襟首を掴んでしまっている。静かな視線が頭を冷やしていく、自分のしている行動が理解出来なくなってきた。   「放せシェリル、皺が出来るだろ」   乱暴が少々見える放し方、息切れする理由なんて考えたくもない。ゆっくりと手のひらでしかめた顔をほぐした、目が異様に熱を持っている。   「私はお前に助けなど求めない」   睨み付けたのに表情を変えない、相変わらず人の気持ちをかき乱すのが上手い奴だ。   「すまなかった」 「謝るなと言っただろ、全て今更な事だ。それと、私に上司面するな」 「・・・お前が助けを求めなくても俺は助ける、上司じゃない立場でな」 「勝手にしろ、偽善者め」   ラーディ主任を押し退けて自分から扉を開いた。
/288ページ

最初のコメントを投稿しよう!

319人が本棚に入れています
本棚に追加