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窓硝子は綺麗に割れていて、廊下には血が点々とあとを残していた。僕は箒とちり取りを持って、硝子の破片を片付ける。
外は暗くて、月が出ていた。
硝子には血と月と僕を写して、愛しそうに自分の元はまっていた窓を見つめているように僕は思えた。
血は、時間が経っていて色が変わりはじめている。
僕は硝子の一枚を素手で掴んだ。
先はとがっていて、下手すれば包丁なんかよりも切れそう。多分握ってしまえば、僕の手も硝子も赤に染まるだろう。
そんなことを、僕は思うようになっていた。
もしかしたら。
僕は、ここの空気のせいでおかしくなってしまったのかも知れない。もしかしたら、僕の中の猛獣が目を覚ましたのかも知れない。
僕は、手の中の硝子を力強く握った。
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