46人が本棚に入れています
本棚に追加
夜になったら、僕は必ず外へ出かける。別に用事はないけど、ただブラブラと歩く。
「兄貴…」
「信次…」
二つ下の弟、信次だった。
僕がどうしたの、と聞くと信次は戸惑ったように。話がある、と言った。
「兄貴、俺百虎に行こうと思うんだ」
「そう」
「で、一年でも兄貴の力になりたいんだ!」
「ありがとう、信次」
信次は、屈託なく笑った。
そしてその次の年。
信次は百虎男子高校に入学した。
もしもあの時。
あの夜。
僕が信次に、百虎男子高校に来ないでって言っていたら。僕は大丈夫だと、言えていたなら。
弟に、絶望を味合わせなかったかもしれない。
今僕は、ひたすら思う。
.
最初のコメントを投稿しよう!