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スコットランドはローランド地方出身。大御祖父様が興した貿易業が成功し、金の力でオーストリアの貧乏貴族の娘(母)と結婚。そして地位を得たレインバーンズ家。
レインバーンズ家には男の子と女の子の双子が住んでいるが、13歳だというのに未だ社交界には出ていないので余り知られてはいなかった。出れば注目の的になっていただろうが、もう出ることは無いだろう。
二人は二卵性だったが瓜二つ。
鏡の様な二人だが、その気質は顔に現れている。
今にも泣きそうな顔の少年と警戒心丸出しの少女。
その整い過ぎた美しい顔は陶器のようで。子供だというのに恐ろしく大人びた表情をしていた。
互いに『お兄様・お姉様』と呼び合い寄り添う姿は子猫そのものだが、他の誰も寄せ付けず、信用などしていない現れなのだろう。
父は厳格な人だったが仕事という理由で屋敷には帰らず、母は病弱という理由で自室に男を呼び出し漁っていた。使用人達はそんな母を笑い、屋敷に代々仕える執事ですら機械的な対応しかしてくれなかった。
まるで毛並みのいいペットに餌だけ与える様に。
屋敷には、双子に構う者は誰も居なかったのだ。
昔、父に与えられたシェパードの【ジョン】を除いて。
温かい手はお兄様だけ。温かい心はお姉様だけ。
それと、ジョン。
庇い合う様に生きてきた。
壊れ物の様に不安定な二人。
せめて少しでも見劣りしていれば【罪】など犯さなくてすんだのかもしれない。
絹糸のような金髪じゃ無ければ、清んだ湖の色の瞳じゃ無ければ。
美しい顔じゃなければ。
でももう手遅れ。
◆◆◆◆
「お兄様みたいに優しくなりたい」
「お姉様みたいに奇麗になりたい」
二人は、互いを補うように存在している様にも見えた。
兄は母に似たくすんだ金髪の癖毛。
姉は父に似たプラチナブロンドの真っ直ぐな髪。
兄は大っ嫌いな母に似た自分が嫌いだった。だからより美しい姉に依存していた。
姉は、劣等感を抱く兄が大好きだった。縋ってくる兄を抱きしめながら、依存していた。
互いに互いが必要だった。
そんな二人に名前は無い。
実際名前はあるのだが、意味をなさなかった。
呼ばれても実感など無かった。
◆◆◆
好きなものはチョコレート。
林檎以外の果物。
ジョン
嫌いなもの
両親
母の恋人達
お酒(両親もツバメも呑んでいたから)
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