◆骨董屋◆

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  骨董屋の店主は、女だと云のに名を梅ノ助と言った。 まるで芸者のようだと思いつつ、長くなる雨を思い、軽い自己紹介をした。   すると店主は『うちは人形メインのしがない骨董屋…』と呟きながら周りを示す。   その指先に導かれるまま、周りに佇む人形達を見据え耳を済ませると、確かに何かが耳に焼き付いた。 言葉と云うより音だろうか。 私は、美しい巻き毛の少女人形と、その周りに寄り添う様にいる人形達が気になった。   その事を梅ノ助に伝えると、彼女は喜々として語り始めた。           そう、彼女達は日本より遥かに遠い、オーストリアの吸血鬼だと…   私は梅ノ助が紡ぐ言葉を、お伽話をせがむ幼子の様に、胸をときめかせて聞いていた。       ・
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