会うは別れの…

10/12
前へ
/12ページ
次へ
「原因?何がいいんだ?」 「うん、向こうに好きな男ができたことにしてくれるとありがたい」 「そうか、じゃあ、それだ」 「横着するない。ま、いいや。でもな、そりゃあ、お前が悪いんだぞ。うん、悪いんだ。この悪党!この腐れ外道め!」 「何だよ、振られた上に、悪人にされちゃかなわないな」 「そうじゃないだろ、その次に言うのは」 「何言うんだよ」 「全くニブいやつだなあ。あっ、もうボケてやがら、話聞いてなかったんですか。向こうに好きな男ができたんですよ、とこう言うんだよ」 「そんなことわかるもんか」 「頼むからそう言ってくれよ」 「わかったよ、よし、言った」 「何も言ってないじゃないか」 「言ったことにしといてくれ」 「ホント、横着者だな、お前は。ま、今回だけは許してやろう。こいつはわしが70年間生きてきた上での哲学みたいなもんじゃが…」 「70年て、お前まだ、21じゃないか」 「うるさいな、ちょっと黙って聞けよ。えーと、どこまで話したっけ」 「お前が70歳ってとこまでだよ」 「うん、俺は70歳。…、70歳!てめぇ、何てこと言いやがる。俺はまだ21だ!」 「いてててて、いちいち殴るなよ。自分で言ったんだろ」 「あ、そうか」
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加