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●護送船
日本が満州国を建国し、台湾を統治していた1930年代。
満州で蜂起に失敗し、捕らえられた台湾反日同盟員たちは宙吊りにされた檻の中で、拷問を受けていた。
首を縄で吊られた一人に、チャイナドレスの女が聞く。
「ホイがどいつか言えば助けてやる。さもないと全員殺すよ」
男が女の顔にツバを吐くと、女は彼の顔に噛みついた。悲鳴が船内に響きわたる。
宙吊りの檻の中の同志たちが一斉に叫ぶ。
「俺だ!俺がホイだ!」
女はその中の一人に目をつけ、手下に連れてこさせる。
首に吊り輪をかけられ引っ張り出されたその男(実はホイ)に女は聞く。
「満州の台湾反日同盟員は何人だ?ホイ・マンキョンが名簿を持ってるはず。お前かい?」
女は彼の頬を流れる血を舐め、シャツの前をはだけ、ズボンの中に手を突っ込む。
「船が台湾へ行くと思うのかい?上海に戻るんだよ!」
嵐で船が大きく揺れたのに乗じて、ホイは女に頭突きをくらわせ、吊り輪から逃れる。
後ろ手に縛られた手を火にかざし、燃える縄を女の手下の首に巻きつけて切ると反撃に出た。
それを見て、檻の中の同志たちが叫ぶ。
「台湾反日同盟万歳!」
すると、女は容赦なく彼らに機関銃の銃弾を浴びせる。
檻の下に駆け寄るホイに、同志たちの血が降り注ぐ。 銃弾の中を死に物狂いで逃れるホイ。彼の網膜に女のドレスの花模様が刻印される。
ホイは、扉を蹴破り、真っ暗な嵐の海に飛び込む。
遠くに、稲光に照らされた街が見えた…
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