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古臭いグローブを持って爆走する。
目的地ははっきりしている。
走ると耳元で聞こえるブォン、ブォンと風の音。風を切り裂いているようでこの音も好きだ。
今は朝早いし人もまったくいない。
古ぼけた商店、錆び付いた鉄製のビルや家。
もう少し時間が経てばボロボロのスクーターに乗った配達員や、訳の分からない遊びをする子供たちに、噂話が大好きなおばちゃんたちが顔を出す。
この街の顔は昔から変わらない。
でも、ガラッと表から裏へひっくり返るように180度変わってしまったものもある。
この大きな街の中心には奴らの巨大な会社(工場)。その会社は天にまで届いてしまいそうな高さで、上には真っ黒な空に人工の太陽。
それから……この街の人格。
奴らが変えてしまったんだ。
「なにもかも全部アイツらの所為だ」と、いつも押しつけてしまう自分がいる。
しばらく走っていると古い5階建てのボロボロのビルが見えてきた。
今は使われなくなっているいわゆる廃墟だ。
周りをキョロキョロ見回す。
端から見たら不審者っぽいだろうか。
これからあまり他人には知られちゃいけないところへ行く。
だからしょうがない。
素早くビルの入り口に入って行き、一気に階段を駆け上がっていった。
俺らの秘密基地へ。
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