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大分、足がしっかりしてきた。
季里阿はふらつきながら紗智の傍らについた。
「っ……」
胸を貫いている剣を抜き取った。
血で濡れた剣を見つめた。
母さんが死んだのは誰のせい?
自分のせいだ。強い霊力を持って産まれてきた事が間違いだった。
それと、復讐へと進んだ一族のせい。
全てをもたらした死神のせい。
「涙も流さないのか?」
珠璃が握っていた剣を奪う。
涙なんか出ない。何もかもが馬鹿馬鹿しい。
母の愛も。全部。
季里阿はすくっと立ち上がる。
「ここ、浄化しないとね…」
季里阿は印を組んで、呪文を唱えた。
どんどん空気が軽くなっていく。
「父さん」
今まで茫然と佇んでいた一弥に語りかけた。
「早くみんなに治癒してあげて」
「…分かった」
一弥は素直に駆け出した。
「珠璃さん、母さんの遺体を運ぶのを手伝ってください」
「私は霊体だ。触れるのは無理だし、お前は小さくて無理だろ。誰か来るのを待て」
そう言い、珠璃はどこかに消えた。
一人になった季里阿は、紗智の手を握った。
「母さんの死を無駄にしないから……」
ボクが復讐を終わらせる。
犠牲を払っても。
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