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厳しい修業を受けて八年経った。
季里阿は一人、部屋に籠っていた。
「季里阿様」
「阿修羅、どうかした?」
暗い表情した阿修羅に問掛ける。
一年ほど前に助けた哀れな妖。
すっかり懐かれてしまい、式になった。
「…一弥様が、息を引き取られました」
「……そっか」
数日前から虫の息だった。
「今日からボクが当主なんだね…」
十五歳。まだ早すぎるかもしれない。
「誰も異議を唱えないでしょう。季里阿様はそれだけの力が」
「ボクはまだまだだよ。さて、父さんの顔を見てくるか」
阿修羅から離れるように部屋を出た。
父が死ねば解放されるなんて、馬鹿な事を考えていた。思えば逆だ。
自分が当主になり、珠璃という枷に縛られる訳だ。
自分で復讐の道に足を突っ込んだのに、どんどん心が重くなっていく。
「はぁ…」
選んだ道は間違った方へと向かっていく。
そして、五年後。
死神の世界に向かった。
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