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鬼殺の肉が皮膚に食い込んできた。
「ぅ……」
意識が朦朧として、痛みも感じない。
今思い出すと、我ながら勝手だと思った。
自分で選んだ道なのに、辛い目にあったことで一族を恨んで、珠璃を恨んで、死神を恨んで、陽飛に八つ当たりして。
自分勝手だ。
鬼殺に取り込まれるのはその報いかもしれない。
どんどん肉が食い込んできた。
終りだ。
ボクも死神も………
「破ァ!!!」
突如として、視界が明るくなる。
「…?」
肉壁を木の蔦が押さえ込んで、季里阿の所まで洞窟を作っている。
「やっと見付けた…」
肩で息をした陽飛が向かってくる。
「……」
何で、と言おうとしたら、皮膚に入っていた肉を断ち切られた。
倒れそうになったのを支えられる。
「は……なせ………」
「無理」
陽飛は季里阿に肩を貸す。
「何、で」
「お前の家族?に頼まれてんだよ。死なせる訳にはいかんだろ」
陽飛は急いで洞窟から出た。
「李无、この入り込んでるヤツ、何とか出来る?」
李无は雷で結界を張って、季里阿を見た。
「わいの精霊の霊力を流せばエエと…。翳れたもんには神聖なもんが効くし…」
李无は季里阿の体に手を置いた。
「ちぃと痛むけど、我慢してぇや」
霊力を流し込んだ。
「ぅ…っあぁあああ…!!!!」
季里阿は首をのけ反らした。
体から黒い煙が出ていく。
煙が出なくなると、季里阿はぐったりと目を閉じた。
「よし。じゃあ、出るか」
李无は季里阿を担ぎ、陽飛は双剣を握った。
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