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霊力も何もかもが無効にされる特別な部屋に置かれた季里阿は、不満げな顔をした。
「何かご用で?珠璃さん」
そこに珠璃が入ってきた。
首には霊力を抑制される鎖。
二人はまだ信用されていなかった。
「謝ろうと思って……」
珠璃は頭を下げた。
「すまなかった。お前達に酷い事をして……」
「…何を今更っ」
季里阿は眉間に皺を寄せて、シーツを握る。
「貴方のお陰で一族は無茶苦茶な歩みをしてきた。ボクは母を失い、家族を失いかけて、もう少しでというところで貴方が裏切って……今更謝られても遅いですよ」
生きがいも誇りも何もかもズタズタに切り裂かれている。
「っすまない…!」
珠璃は拳を握り締めた。
「……もういいです。これからは自由にしていきますので」
季里阿はぽすんと枕に体を沈めた。
「そうしてくれ…。後、私の我が儘に付き合ってくれてありがとう…」
珠璃は軛を返した。
部屋に静寂が訪れる。
「…どういたしまして」
季里阿はこっそり呟いた。
そして、手首の鎖を見た。
これを施した人物は今、どこにいるのだろう。
「お礼が言いたいんだけどねぇ…」
色々と救ってくれた事と、鬼殺からかばってくれた事を。
「後にしよ」
今は早く人界に帰れるようにしなくてはならなかった。
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