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ざぁぁ…と風が吹き、森の木を揺らす。
「……」
陽飛は冷や汗をかきながら、三対の目を無言で受けていた。
言うまでもなく、四季の神の圧力を受けているのだ。
少し離れた所に网菜と四季の精霊が見守ってくれている。
「あの…これ」
陽飛は白剣を差し出す。
三人は悲しげな顔をした。
「…やっぱり、姫羽はいないんだね……」
嵐がその剣を受け取った。
「俺のせいで…」
陽飛はうつ向いた。
「本当はお前を八つ裂きにしたい気分だ」
汐の迫力のある声にびくっとする。
「しかし、その腕に免じて許しましょう」
苑の優しい声が耳に入ってきた。
「汐…もう少し優しく言ってあげなさい」
「けど…い゙!」
嵐が汐の脇腹を肘でど突いた。
「ごめんね陽飛、汐はこういう奴なんだ。こいつは空気だと思って聞いてくれ」
「お前…っ」
うねる汐を流して、嵐は話を続けた。
「悔やむ事はないよ。姫羽が君を生かすことを選んだなら、僕達はそれを信じる。でもね、これから先、死のうものなら、許さないから」
嵐は少し殺気の篭った目で陽飛を見た。
「っ…分かった」
「ならいいよ。あっ、これ…君が使って」
白剣を陽飛に渡す。
「え?」
「一本壊れたんでしょう?それに私達の所にあっても仕方ありませんから…反って悲しくなるだけです」
苑が目を伏せた。
「ふん!絶対に壊すんじゃねぇぞ!!」
汐がびしっと指差す。
「あ…ありがとう…!」
陽飛は白剣を握り締めた。
「数十、いや、数百年したら新しい春が誕生する。その時にまた来るからね。それまで死なないでよ」
そう言って、四季の神はすぅと姿を消した。
陽飛は肩の力を抜いて、その場にへたり込んだ。
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