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「で、お前らはいつ帰るんだ?」
こほんと网菜が咳払いする。
季里阿は手を顎に当てて考える。
「うーん、そうだねぇ…。もう怪我はだいぶ良くなったし、明日にでも帰ろっかなぁ」
一番酷かった自分の怪我は完全になくなった。
短刀で自ら斬った腕には、一生消えない傷は残ったが。
「それがいいです。人界で皆が待ち詫びていますよ」
無事だと式を飛ばしたら、早く帰ってこいと返事が帰ってきた。
「あらまぁ、愛されてるのねぇボクってば」
「そんなんでも一応当主だもんな」
朱の冷たい言葉。
「酷いよ。だいたいもう当主とか関係なくなるんだから」
「何で?」
陽飛は首を傾けた。
「もう復讐の連鎖は終わったし、一族を解散しようかなぁてね。
自由に生きてほしいのさ。家族には……。だから、もう上に立つ意味もないって訳」
今まで縛った分、皆がしたい事を自由にすればいいと。
それなのに、当主なんて上の立場がいれば、息苦しいに決まっている。
「お前はどうすんだよ」
「ボクは……術使うしか能がないからねぇ。それを役立てるさ。
また死神の役に立てるように頑張るよ」
季里阿は札をぴらぴらとひらめかせて、笑う。
「んじゃ、面倒事はそっちに任せるか」
「あっ、勿論これはもらうよ?」
季里阿は指で輪を作った。
「……有料かよ」
ケチだと思った。
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