詩集「日暮らし」

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「目覚め」 雪はなぜ 白いのだろう 季節の一つを現す幻 溶けゆく命の形成 時に乱れる静かな舞い娘 類を見ぬ艶やかな具現美 舞い降りる不可思議 その白に手をやり 儚さにも似た感慨に浸り 滴に変わる姿を そっと見つめながら 僕は想い浮かべる 透き通るような美青草 遥か遠くから響く山びこ 流れ変わらぬ 帰らざる河のせせらぎ 万年にも及ぶ 寂しさの集う谷 その総ては 巡りめく旅の最中であり その総てには 消えぬ哀しみの影が在る 時に姿を隠したく思い 白で埋め尽くされる事を 望んでいるからだろうか 唯のひとときでも 姿を隠してくれる 白を待ち焦がれて 眠る気持ちは 皆、同じなのだろうか
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