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「ごめんください」
屋敷の扉を開けて、呼び掛けてみる。失礼かとも思ったが、呼び鈴らしきものが無いのだから仕方ない。
「ごめんください!」
返事が無いので、もう一度呼び掛ける。
「……?誰もいないのかな?」
数瞬迷ったが、結局足を踏み入れることにした。
「すいませーん、誰かいませんか!?」
声を上げながら屋敷を歩いていく。照明はついていないが、窓から日の光が差し込むので暗くはなかった。
「……ん?」
しばらく歩いた僕は、不意に、一つのドアの前で立ち止まった。……なんのことはない、ただの部屋だ。
ただ、その内側からはなんとなく――ホントになんとなくでしかないけど、人の気配がするような気がする。
「…………」
意味もなく息を潜めてドアノブに手を掛ける。
そして、一息の間を置いて勢い良くドアを開けた僕は――
「……え?」
そのまま、そこに凍り付いた。
だって、おかしすぎる。
――そこにいたのは、僕と同い年くらいの少女だった。……それは良い。
――長い金色の髪の毛と、黒いゴシックドレスを来た彼女は、人形のように可愛かった。……それも良い。
――おかしいのは、彼女の雰囲気。……どうして、あんなに可憐で凛とした印象を受ける少女から。
……今にも消えてしまいそうなはかなさや、触れれば霧散してしまうかのようなあやうさを感じるのか。
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