再び屋敷へ

1/2
前へ
/17ページ
次へ

再び屋敷へ

――翌日。 僕は記憶を頼りに、再びあの屋敷へやってきた。 「……よし」 軽く深呼吸して扉を開けて、中へと踏み込む。 なぜこんなことを、とは思うが、こうしたかったんだから仕方がない。 暫らく歩いた僕は、彼女の部屋の前で足を止めた。 「…………」 もう一度深呼吸をして、目の前のドアを開ける。 「また……来たんですね」 そうして。 彼女は昨日と同じように、そこにいた。 「うん、来たよ」 答えながら、部屋のなかに入る。 殺風景な部屋。ベッドと、姿見の鏡と、彼女の座っている椅子くらいしか物がない。 と、彼女が口を開いた。 「私に関わらないでって……言いました」 彼女は、悲しそうな瞳で、そう告げる。 だから僕は、答えた。 「うん、関わるなって言われた。だから、君が本気で迷惑してるなら、今すぐ帰る。……どうかな、僕がいると、迷惑?」 僕の問いに、彼女は―― 「……はい、迷惑、です」 そう、答えた。 だから僕は、言った。 「そっか。じゃあ、僕はここにいるよ」 ――だって。 彼女は僕の問いに、一瞬……悩むように、間を置いたんだから。 それだけで、ここにいる理由は十分だ。 ――その、証拠に。 彼女は椅子から立ち上がって……言った。 「……そうですか。それなら、そこに座ってください。私は、ベッドに座りますから」 それは、僕を受け入れる言葉。彼女は、僕を拒むのをやめてくれたのだと――その思考が間違いだと気付かされるのは、それからすぐの事だった。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加