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再び屋敷へ
――翌日。
僕は記憶を頼りに、再びあの屋敷へやってきた。
「……よし」
軽く深呼吸して扉を開けて、中へと踏み込む。
なぜこんなことを、とは思うが、こうしたかったんだから仕方がない。
暫らく歩いた僕は、彼女の部屋の前で足を止めた。
「…………」
もう一度深呼吸をして、目の前のドアを開ける。
「また……来たんですね」
そうして。
彼女は昨日と同じように、そこにいた。
「うん、来たよ」
答えながら、部屋のなかに入る。
殺風景な部屋。ベッドと、姿見の鏡と、彼女の座っている椅子くらいしか物がない。
と、彼女が口を開いた。
「私に関わらないでって……言いました」
彼女は、悲しそうな瞳で、そう告げる。
だから僕は、答えた。
「うん、関わるなって言われた。だから、君が本気で迷惑してるなら、今すぐ帰る。……どうかな、僕がいると、迷惑?」
僕の問いに、彼女は――
「……はい、迷惑、です」
そう、答えた。
だから僕は、言った。
「そっか。じゃあ、僕はここにいるよ」
――だって。
彼女は僕の問いに、一瞬……悩むように、間を置いたんだから。
それだけで、ここにいる理由は十分だ。
――その、証拠に。
彼女は椅子から立ち上がって……言った。
「……そうですか。それなら、そこに座ってください。私は、ベッドに座りますから」
それは、僕を受け入れる言葉。彼女は、僕を拒むのをやめてくれたのだと――その思考が間違いだと気付かされるのは、それからすぐの事だった。
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