祝賀会

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それには思い当たる節がある。 初めての射撃訓練の際、お手本を見せてくれと銃を差し出した途端、冷静沈着という彼女への第一印象を覆す程に激怒した。 「それはね、華里奈ちゃん自身の意志に関係なく起こる自己防衛本能の一種らしいの。」 「防衛?俺も怒られた事あるけど、手渡そうとしただけだし…撃とうとした訳じゃ…。」 「ううん、自分の身の安全のための防衛本能じゃくて……これも伊乃さんの推測なんだけどね、もしかしたら華里奈ちゃんに起こった何かの記憶を掘り起こさないようにしてるんだと思う。」 「それって…どうゆう…。」 「華里奈ちゃんの方向感覚を狂わせた事件には銃が深く関係してるみたいなの。だから銃を目の前にすると、記憶がフラッシュバックしちゃうのかもって…。華里奈ちゃん自身、思い出したくないみたいだし…。」 成る程、それで防衛本能というわけか…。 「…なあ、もしフラッシュバックしたらどうなるんだ?何かマズいのか…?」 「…それは…。」 この質問に対しての夏美の返答の口調はとても重いものだった。 「……下手したら、廃人になっちゃうかも…って…。」 「は、廃人!!??」 脳の一部を狂わせる程の出来事。それを幼少期に受け、更にはその記憶をフラッシュバックさせてしまうだけで廃人へと変貌してしまうかもしれないという大きな爆弾を背負っている。 …あいつがどんな気持ちで生きて来たのか…俺には想像すら出来なかった。
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