祝賀会

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明彦の強い要望により大豆はゲージへ。(可哀相に。) 夏美は翔が調達した食材をフルに使い、思わず唾液がナイアガラの滝の如く溢れそうな超一流絶品料理が完成。テーブルに並べられた。 そしてアルコール飲料も。 だが、これで準備万端という訳ではない。 沸き上がる食欲を我慢し、しばらく待つ。すると… コンコン! ノック音。 「あー、やっと来たみたいだねー。開いてるよー!!」 翔の呼びかけと同時にドアが開く。 そしてリビングに姿を現したのは…。 「……何だ…これは…?」 構造図を右手に、刀を左手に握っている…困惑した表情の華里奈だった。 外見からは全く想像できない。…彼女に、脳の障害があるなど。 しかし、右手の構造図がその現実を指し示すように存在していた。 その時、 「守君。」 夏美に耳元で、本当に微かな声で囁かれた。 「…あの事、華里奈ちゃんに聞いたり話したりしちゃダメだからね。」 あの事とは他でも無い。 華里奈の方向感覚を狂わせた、あの謎の事件の事だ。 勿論本人に問いだだしたり、話を聞いたりするつもりは微塵も無い。 それがきっかけで記憶がフラッシュバックし、恐れている事態へと発展しかねないからだ。 何より華里奈自身が思い出したくない事ならば尚更触れるべきではない。 守は小さく夏美に頷き、了承のサインを見せた。 「華里奈が来ないと始まんないからねー。さぁ、座って座ってー。」 「あ、あぁ。」 翔に背中を押され華里奈が座り、テーブルの周囲に配置された椅子が全て埋められた。 「そういえば華里奈さんはどうしてここが分かったんですか?」 と、明彦。 「私の部屋のドアにこんな物が貼られてたからな…。」 そう言いながら華里奈がポケットから取り出した紙。そこには、こう書かれていた。 『1人で中島 翔の部屋に来て下さい。           by守』 …何だこの…今から告白される女子の下駄箱に入れられた書き置きみたいな内容は…。 ていうか、差出人…俺かよ!? 「…何で差出人が守君?ずっとあたしと居たから貼る暇なんてなかったよね?」 夏美!良いところに気が付いた!何故だ!? 「だって守のためのお祝いなんだからー、別にいーかなーって。」 ……………あ、そう。
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