6ヶ月後

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「夏美…翔…。………ありがとな…。何つーか…庇ってくれて。」 「気にしないで。私ね、ああいう身勝手な奴が許せないの。…あんな御託、聞いてるだけで虫酸が走るよ。」 「………。」 初めて目にした、夏美の激怒。 「じゃあ、あたしもそろそろ行くね。」 訓練区へ戻るのだろう。夏美も休憩所を後にした。 「ごめんねー。明彦も根は悪い奴じゃないんだけどー…。」 場の空気を和ませるかのような明るい声で翔が口を開いた。 「いや、いいよ…。」 確かに明彦の言う通り、自分は皆にとってお荷物になり、それが原因で不合格になってしまうかもしれない。 そんな…皆の努力を無駄にするような事…許される筈がない。 「なぁ、翔。さっき言ってたゴム弾入りの銃ってヤツ、今使えるのか?」 「んー…頼めば借りれると思うよー。」 「そっか。…1つだけ頼みたい事あるんだけど、良いか?」 訓練区 第一銃火器模擬戦闘室 ここは幾つもの壁が室内を遮り、まるで迷路のような造りになっている、実戦を想定して設けられた訓練室だ。 どこで敵と出くわすか。どこから狙われているのか。それらが全く分からない状態での全神経を集中させなければ勝機を掴めない戦闘訓練。 「借りて来たよー。」 この部屋の前で立ち尽くしている守の元へ、三丁の拳銃をその手に納めている翔が走り寄ってくる。 「おう。悪いな。」 守は拳銃を二丁受け取り、ゴム弾をリロードした。 「この拳銃はゴム弾でも、本物の弾を撃った時と同じような銃声と反動が起きるようになってるからー。あと、当たったら凄く痛いからねー。」 「へ?当たっても…大丈夫なんだよな?」 「大丈夫だけど…痣にはなるかなー。あ、ちゃんとゴーグル付けといてねー。目に入ったら危ないからー。」 「わかった。」 試験では実際に撃ち合って戦うというのなら戦闘馴れをしておいて損はない。二丁拳銃でこの訓練を行うのは得意な武器での戦闘技術向上のためだ。
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