戦闘員資格試験

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夏美は右折した十字路から更に直進し、キョウコとの距離を大幅に広げていた。 逃げるためではない。翔の作戦を成功させるためだ。 ―――――――――― 『夏美は狙撃が得意だったよね?』 『うん…。でもこんな近くじゃ狙撃なんて…。』 『分かってる。夏美はずっと向こうに走って、そこから狙って。』 『…え?』 『あの男に真っ向から突っ込むのは危ないから夏美が遠くから狙撃して欲しいんだ。あいつは俺が引き付けて時間を稼ぐから。』 ――――――――― 「……ハァッ…ハァッ…。」 夏美は息を切らし、立ち止まった。 随分と走った。この辺りで良いだろう。 先程の十字路が遥か遠い。狙撃するにはピッタリの距離だ。 ジャキッ スナイパーライフルにゴム弾をリロードし、倍率スコープを覗く。 無線を口元へ運び、こう言った。 「翔君…準備できたよ。」 「…了解。」 ダッ 夏美の準備が完了したなら無理をしてキョウコと撃ち合う必要はない。 翔は十字路を右折し、夏美が走って行った方向へと向かった。 「逃がさないわッ!!」 キョウコも翔を追いかける。何が何でも仕留めてやる…と。 この作戦の要はあたしにある。 十字路を曲がって来た翔君を追うキョウコさんを…狙撃する。 ……手汗が…凄い。 落ち着け、冷静になれ! スコープを覗くあたしの目に、翔君の後ろから、サブマシンガンを持ったキョウコさんが曲がってくる姿が見えた。 …もらった! ドゥン!!……… 撃ちだされた1発のゴム弾。 翔の真横を通過し、直進。 そして バチィッ!! 「ぎゃっ!?」 キョウコの胸部へと命中した。
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