戦闘員資格試験

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《華里奈さん!聞こえますか!?》 その時、無線に明彦からの音声が入る。その大袈裟という表現がピッタリな声からは焦り・動揺のようなものが感じられた。 「どうした?」 即座に無線に耳を傾ける華里奈。 《こちらに戦闘員が多数!数は11!応援頼みます!》 ヒュッ! 「ぅあッ!」 ゴム弾がエレベーター乗り場からの狙撃を行っている夏美の側を高速で通過した。風圧が髪を僅かに靡かせる。 下で行われている銃撃戦の流れ弾だろうか。しかし、 バチッ!! 「ッ!」 今度は夏美の背後のエレベーター扉へと命中。 流れ弾などではない。……狙われている! 自分の他に狙撃手がいるようだ。それも、戦闘員の狙撃手が。 だとすれば一カ所に留まり狙撃をするのは危険。スナイパーライフルを担ぎ、エスカレーターへと走る。 少々無茶だが動き回りながらスコープを覗き、敵の狙撃手を捜す他に方法は無いだろう。 そして狙撃は高い位置から行われる事が多い。ターゲットの捜索をより効率的にするためだ。 ここでの高い位置と言えば、訓練区を一望できる四方に設置されたエレベーター乗り場のみ。 自分が狙撃していた場所を除いて三ヵ所をスコープで拡大し、覗き込んだ。 だが、 (…いない!?) エレベーター乗り場には狙撃手どころか何一つ見当たらない。 念のためエスカレーターも隈なく捜索するが…やはり、いない。 だとしたら考えられる場所は下のみ。上手く物影に身を潜め、こちらを狙っているのだろう。 だが、こちらの姿を捉えられている以上……下手に動けば撃たれるだけ。 こうなれば……仕方が無い。 「こちら夏美。聞こえる?そっちにスナイパーライフルを持った戦闘員が隠れてると思うの。あたし、その人に狙われちゃってて身動きが取れなくなったから…お願い。早急に始末して。」 無線で救援を求め、両脇を壁で遮られたエスカレーターの中腹を行き来しながら身を隠す事にした。
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