最終関門

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ある程度近づくと本田は発砲をやめ、通路の奥へと姿を消した。 華里奈は接近戦に長ける。引き際を誤れば不利な状況に陥ってしまうからだ。 華里奈もその後を追い通路へと進入した…が。 「何…!」 そこに本田の姿は無かった。 見ると箱のような四角い物体が訓練室の天井の上まで階段状に積み上げられている。 用意周到とはこの事か。天井へ逃げる算段までしていたとは…。 だが足場がある以上、追い掛けない手は無い。足早に四角い物体の上を駆け上がった。 そして訓練室の上へと姿を現した、瞬間。 「…!」 目前に拳銃をこちらへ構えて待ち構えている本田の姿が視界へ飛び込んだ。 …罠だ! ダァン!! 至近距離での発砲。 しかし、間一髪。華里奈は咄嗟に膝を曲げ低姿勢になり、ゴム弾は虚しく頭上を通過した。 「舐めるな、本田。」 ヒュン! そして居合斬りのように竹刀を振り抜く。 本田は後方へ跳び退き、それを避けた。 だがこの好機を無駄にする訳にはいかない。華里奈も跳躍し、一気に本田へと迫る。 「もらった!」 そのまま本田の頭部目掛けて竹刀を振り下ろす。だが本田も接近戦を苦手としている訳ではない。紙一重で竹刀を回避した。 続けさまに着地した華里奈に膝蹴りを叩き込もうとする。 が、華里奈はそれを左手の甲で受け止めた。 すると本田は拳銃を華里奈の頭部目掛けて振り下ろした。 ガッ!… またもや間一髪。右手で竹刀を持ち上げ拳銃による打撃を阻止。おそらく気絶を狙ったのだろう。 「詰めが甘かったな。」 華里奈は右足を振り上げ、 「うぐ…!」 本田の脇腹を蹴り上げた。 「どっちかしらね…。詰めが甘いのは!」 ゴッ!… 「……ぅ…!」 突如鳩尾を襲う衝撃。 本田が拳銃を持っていない方の手で殴り付けたのだ。 一瞬、全身の力が抜ける。 無意識に口が開き、微量の唾液が滴り落ちる。 その隙に本田は華里奈の胸倉を掴み、背負い投げをした。 抵抗なく投げ飛ばされ落下。訓練室の天井の上を転がって行く。 そして… 「…しまっ……!」 本田の顔色が一変する。 不測の事態だ。 勢い余り、華里奈は訓練室の上から落下してしまった。
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