最終関門

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古賀に連れられ長い距離を移動した先は…。 「……何だよ…ここは…。」 唖然とする守。そこは、一言で言い表せば……牢獄のような場所だった。 区切られた各牢屋の中には、手錠で拘束されている質素な服装の人間が2人ずつ閉じ込められている。 この薄暗い、ただただ広い部屋の中に羅列する牢屋のある部屋に突然連れて来られたのだ。動揺や驚愕どころの話ではない。 この刑務所の隔離留置所のような雰囲気は試験合格の喜びなど跡形も無く吹き飛ばしていた。 等間隔に配置されているマシンガンを所持している見張りや牢屋の中の囚人からの視線が当てられ……何と言うべきか、非常に気分が悪い。 囚人達はとうに脱獄する気も暴れる気も起きないのか、とても大人しい。 静寂の中を響くのは守達の足音だけだ。 「見ての通りここは牢獄区だ。訓練生は立入禁止のな。」 淡々と言葉を発する古賀。まさか自分達も手錠で拘束され、牢屋にぶち込まれるという訳ではないだろうな…。 「そんな警戒しなさんな。別に取って食おうって訳じゃない。」 考えている事が顔に表れたのだろう。心を読まれたかのような返答だった。 それきり、誰1人として口を開かなかった。 そして、牢獄区の最も奥にある扉。一行はそこで静止した。 「ここだ。入れ。」 古賀は先陣切って扉を押し開き、入室した。 そこには… 「…君達が今回の合格者かね?」 老人が1人、待ち構えていた。 白髪頭で歳は60代前半と見受けられる。 「……今回はこれ程しか合格できなかったか…。」 老人は守達をさっと見渡すと、小さく溜息をついた。 「そういや、お前らは初対面だったよな。この方はこの本部の最高責任者、望月 友由(もちづき ともよし)さんだ。」 と、古賀。 最高責任者…という事は、この本部の頂点に立つ者。 それが、このどこにでもいそうな老人。 正直、予想外だ。 「では、この奥の部屋に来てくれ。君達に最後の課題を与えよう。そうだ。君達が本当に戦闘員になれるか否かの、最終関門だ。」 そう言うと望月はこちらに背を向け、のんびりと歩き出してしまった。
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