狂い出す運命

16/21
前へ
/568ページ
次へ
阿嘉欺は自分へ向かってくる武谷にターゲットを変更し、ナイフを振り上げた。 月光を反射して煌めく刃は武谷の顔面へ一直線に直進し、その皮膚を…裂く。 「あッ…く…!」 頬に一筋の切り傷が刻まれた。だがこの程度で怯む事は無い。 ナイフ掴んでいる阿嘉欺の手の甲を思い切り殴り ナイフを…落とさせた。 「くッ…そ…!」 武谷の首を掴もうと阿嘉欺の右腕が伸びる。 それとほぼ同時に武谷が阿嘉欺に背中を見せる。 (貰った!) 阿嘉欺が目前に見える後頭部を掴もうとする、刹那。 「…ッ!?」 体の動きが止まった。 否、止められた。 見ると胸倉と右腕を掴まれている。 こちらに背を向けたままの武谷によって。 「っ…ぁぁあああ!!」 その時、阿嘉欺の体が一気に持ち上げられた。 武谷の背負い投げだ。 「ぐっ…そ…!」 こうなっては抵抗する事も出来ない。 阿嘉欺は遠心力により増幅する勢いに身を任せ、 ガシャァァン!! 窓ガラスに頭から突っ込んだ。
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29147人が本棚に入れています
本棚に追加