最終関門

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………は? 何だかわからないが、今物凄く軽い口調で大変な事を言われた気がする。 「聞こえなかったのかね?…こいつらを殺せと言ったんだよ。」 「……………殺せ…?俺達が……こいつらを…?」 守の声は……震えていた。 殺せって………そんな簡単に言われても…。 「言われた通りにしろ。じゃないと、いつまで経っても戦闘員にはなれんぞ。」 と、古賀。 戦闘員とは人殺しを仕事としている者達だ。これはそのための訓練のようなものなのだろう。だが、 「できません…。」 夏美からの拒否言動。 拘束されている囚人達の目に微かな希望が宿る。 「おいおい…躊躇なく人を撃てない事にゃ戦闘員なんか無理だぞ…。」 「でも…抵抗もできない人を撃つなんて…。」 「抵抗できない奴は撃てないか。なら抵抗してくる奴を撃つのはもっと無理だな。」 「………でも…!」 引き金を引くことを拒んでいるのは夏美だけでない。 守も明彦も翔も…躊躇っている。 「…ねぇ、華里奈もやった事あるの?こういうの…。」 翔は横目で、凍り付いたような表情で言った。 「私は今まで何人殺して来たと思ってる。愚問は控えろ。」 「…そうだよね…ごめん…。」    いつかマフィアをこの手で倒そうと志し、死に物狂いで頑張ってきた。なのに…こんな処で躓くとは…。 人を殺すなんて簡単だと思っていた。だが……引き金に添えられた指が重過ぎる。 「……守君。何を躊躇ってるんだ?」 見兼ねたのか、古賀がからかうような口調で言った。 「でもよ…。」 「でもじゃないだろう。君はマフィアに復讐するために頑張って来たんだろ?人を殺すくらいできなけりゃ復讐なんて諦めた方がいい。」 「……ッ…!」 「それと良い事教えてやる。こいつらはな…。 君のお母さんを殺したマフィアの下っ端達だ。」 …………へ? こいつらが……俺や姉貴の生活をぶち壊し…母さんを……殺した奴ら……? 「……本当か?」 「嘘ついてどうするんだ。俺に得はないぞ。」 「……そうかよ…。」 ダァン!!……… 始めて味わった。怒りが理性を超越する瞬間を。 そして銃越しに伝わる、人を殺した感触を。
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