14年間

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「守……マフィアに復讐するんだって。」 と、舞。 「………復讐?」 「お母さんが……殺されちゃって……それで…。」 舞は涙を必死に堪えながら…口を開いた。 そういえばさっき浩司が言っていた。守の母が…綾子が殺されたと。 「私も……守も殺されそうになって…!それで…守は……お母さんと…私達の…仇を討つって…!」 言葉が鳴咽で途切れ途切れだ。 その表情は……涙でびしょびしょに濡れている。 ………くそ…。 悔しい。 俺が傭兵なんかにならなけりゃ…。 馬鹿みてぇに家庭を捨てなけりゃ…。 こんな事にはならなかったかもしれないってのに…! 綾子が死んだ。守と舞が死にかけた。 その時に側にいなかった、助けてやれなかった自分が憎い。………憎い憎い憎い憎い憎い!!! 「……くっそおおおおぉぉぉぉぉ!!!!」 バキィッッッ!!!…… ……気が付けば俺はぶつけ処の無い怒りに駆られ、壁を力の限り殴り付けていた。 自分が馬鹿だったがために…愚かだったがために…。 家族を救えず、揚げ句の果てには実の息子が復讐鬼へと変貌してしまった。 俺は今、この14年間を傭兵として過ごしていた自分を呪いたい。呪い殺してやりたい。 正直、守には復讐などして欲しくない。 守という名は…自分の命を賭けてでも守るに値する大切な人が出来た時、その人をしっかり最後まで守り通せるような人間に育って欲しいと思い、付けた名前だ。 復讐なんて……真逆じゃないか…。 だが…俺に『復讐なんかのために生きるんじゃない。』などと言える権利は無い。 だとしたら……せめて父親として出来る事は…1つだけだ…!
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