14年間

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「…舞。………守には、俺の事は黙っといてくれないか?」 「…何で…?」 「合わせる顔が無いんだよ。」 14年前…綾子と離婚し出ていった時。守はまだ言葉すらも満足に喋れない赤ん坊だった。当然、父親の事など覚えている訳がない。 「でも…。」 「良いから。内緒にしといてくれよ。」 そう言うと長海は舞へ背を向け、歩き出した。 「お父さん!」 「…!」 お父さん。この単語にナーバスに反応してしまった。意志に反して足が急停止した。 理由は………分からないが。 「会えて…良かった。」 「舞…。」 会えて良かった? こんな親父にか…? …そうだよな。こんな奴でも、舞にとってはただ1人の父親だからな。 困ったな。こういう時、どんな言葉を返せば良いのか分からない。 まあ…いいか。正直に言おう。 「俺も、話せて良かったよ。」 さて、行くか。司令室に。 司令室 「……お前、良いのか?」 突然の出来事に困惑を隠せない様子の古賀。 たった今戻って来た長海に、ある話を持ち掛けられたからだ。 「他に仕事があるんだろう?ほっぽらかしとく気か?」   「別に良いさ。傭兵はいくらでも替えが効くからなぁ。それとも俺じゃ足手纏いってか?」 「いや……お前の強さはよく知ってるが…。」 「じゃあ問題ないだろーに。俺がわざわざ言ってやってんだぜ?俺を傭兵として雇わないかってな。」 父親面をして、綾子や息子達の仇を討とうとは思わない。 せめて……今度こそ側で息子達を守ってやりたいだけだ。 「……まあ、こちらとしては好都合だが…。」 「じゃあ決定だ。」 俺は今度こそ家族を守りたい。 「早速、ギャラの話に入ろうぜ。」 絶対に…死なせはしない。
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