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屋外
華里奈がグラウンドの脇を駆け抜け、行き着いた先は…授業用屋外プールへ繋がる小さな建物の扉の前。
まさか12月に屋外での水泳授業を行うという事は有り得ないだろう。
潜入するのなら間違いなくここにする筈だ。周囲を見渡しても…誰1人いない。
下手をすれば唯一の連絡手段である携帯電話を破損してしまう可能性があるため、華里奈は携帯電話をケースにしまい地面へ置いた。
そして入れ物から…鞘に納められた刀を取り出す。
それを腰に携えると、音を立てないよう慎重に扉を開いた。
建物内は薄暗い。内部にはプールサイドへ一本道のように繋がっている廊下と、その両脇には男女それぞれの更衣室のドアがあるだけ。
ここから見える範囲には…誰もいない。
気配を断ち更衣室のドアに接近。中の様子を探ろうと聞き耳を立てようとした。…その時。
「誰だテメェはッ!!?」
大声で怒鳴られ、即座に振り返る。
そこにはプール方向からズカズカと歩み寄ってくる、人相の悪いスーツ姿の男が見受けられた。
一目で分かる。こいつは教師ではない。
スクールジャックを遂行すべくマフィアに買収された…暴力団員。
やはりここに潜んでいたようだ。
「何で生徒がいんだぁ?とっとと教室に戻らんかい!!!」
無駄に大きな怒号。誰かの耳に入ったら不審者と間違えられるかもしれない。……それ以前に不審者なのだが。
「っと…何だぁ?腰に何ぶら下げてんだぁ?」
手を伸ばせば届く距離まで接近してようやく刀の存在に気付いたらしい。
これだけ薄暗く、刀を自らの体の陰に隠していたのだから無理もない。
「まぁいい。とっとと教室に……ん?そりゃあマズいか…。テメェ、ちょっくらこっち来い!!」
自分達の存在を知った生徒を黙って返すのは危険だと考えたようだ。おそらくはスクールジャック開始までの間、更衣室にでも拘束・監禁するつもりか。
男は華里奈の腕を掴もうと右腕を伸ばした…が。
ザシュッ
ボトッ
「……あ?」
突如…右腕が軽くなったように感じられた。
…否、実際に軽くなっている。
……肘から先が…失くなっている。
「……ぁ…ああ………ぎゃぁあああいあぁあああああ!!!!」
それを確認した瞬間、男の気が動転。悲痛の叫びが響き渡った。
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