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「上司?」
「えぇ。そいつらは目的をひそかに達成させるために部下を外国に送り込む事があるの。今みたいにね。」
「…ちょっと待った。」
手の平を武谷に見せ、一旦口を止めさせる。
「外国に送り込んだってことは、その上司ってのは日本人じゃねえのか?」
「? 当たり前じゃない。そもそもマフィアというのはイタリアかアメリカにしか殆ど存在しないのよ。」
「…そうなのか!?てことは芝崎とかは…外国人!?」
「いや、違うわ。芝崎達は元々は日本の暴力団だったの。それでマフィアに買収されて、良いように使われていた…というわけ。」
「……へぇ…。」
話が進んで行けば行くほど恐怖感が沸いてくる。何という事に首を突っ込んでしまったのか…。
「……ねぇ、椎羅木君。」
その時武谷が身を屈め、守の顔を覗き込んできた。
「…なんだよ?」
「…意外に冷静なのね。あんな目に会ったのに。」
「………………そういえば…そうかも…。」
何故だろうか。
あのような惨状を目の当たりにして、何故人殺しと普通に会話が出来る程に冷静なのだろうか。
もしかするとこれは…現実逃避なのかもしれない。
自分に降り懸かった出来事が余りに現実離れしているため…これは夢なのではないか。明日普通に登校すれば、普通に教師達がいて、普段通り何も変わらない学校生活を送れるのではないか。
そう勝手に決め付けている自分が確かにここにいる。
現実を現実として…受け止められない…。
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