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この壁はコンクリート製。おまけに表面がごつごつしている。
故に壁に衝突した背中と後頭部への衝撃は凄まじいものだった。
体中から力が抜け、左手から拳銃が落下する。
この状況で武器を失うのはマズい。これでは…。
「………あ…?」
その時、守の胸倉を掴んだまま、男の動きが止まった。
守の顔をまじまじと覗き込んでいる。
「このツラ………お前、椎羅木 守か…?」
………何?
「…あぁ、そうゆう事。成る程な…。」
勝手に納得し始める男。
「何…だよ…。」
守は後頭部を中心に脳内を染み渡るような痛みを堪え、言った。
勝手に納得している点は別に構わないが初対面の筈のこの男が自分の名前を知っていた事がどうしても気になったのだ。
「大した事じゃねぇっつーの。…ただ、思い出しちまってなァ。」
次の言葉を耳にした途端、守は驚きを隠せなかった。
「半年前、この学校で殺されそうになった…マジ憐れな姉弟の事をよ。」
…半年前……この学校で殺されそうになった………姉弟…?
この言葉が指す人物は…どう考えても…………守と舞だ。
「家で大人しくしてりゃ良いものを、馬鹿みてぇにのこのこ学校に戻ってきちまったがためになァ…。あん時のお前のツラ。…くははっ…!忘れるわけがねぇ…!」
「……ちょっと待てよ…何でお前が…そんな事…。」
「何で知ってるかって?そんなん簡単じゃね?
あの教師に成り済ましてたヤクザ共、俺が送り込んだんだよね。」
教師に成り済ましたヤクザ……芝崎達の事か。
という事はこの男は…本田があの時言っていた…芝崎達の上司…!
今は撤去されているが、あの時は学校中に監視カメラが設置されていたとも聞いている。この男はそれを介して守を見ていたのだろう。
「ところで椎羅木。超良いこと教えてやるよ!」
男は薄気味悪い笑みを浮かべながら、こう言った。
「あの後お前ら、口封じのために殺されそうになったよな?その口封じ部隊を仕向けたのも……俺なんだよ…!」
…………え…?
機能が低下していた脳が一気に再生する。
よく考えろ。
この学校に芝崎達を送り込んだのは…こいつ。
俺と姉貴と母さんに口封じ部隊を仕向けたのも…こいつ。
という事は、俺と姉貴から日常を奪ったのも…こいつ。
母さんを死なせたのも…こいつ。
俺に降り懸かった全ての悲劇の元凶は…こいつ?
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