クリムゾン クリスマス

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「華里奈さん……また1番ですか…。」 と、明彦。 ババ抜きを始めて5回目の勝負となるが、どういうわけか華里奈は全勝している。それも正直イカサマしてるんじゃねーかと考えてしまう程スムーズに。 「私に運気があるだけ。偶然だ。」 華里奈が何となく自慢げに言った、その時だった。 コンコン ノック音が耳に入る。 「…っと、誰だ?開いてますよ!」 無用心と言われるかもしれないが、守は自室を留守にする時以外は入口の鍵を掛けていない。 こんな場所に強盗や空き巣などが出る訳が無いが…用心深い者はほぼ常に鍵を掛けているらしい。 カチャ… ドアが開かれ、ノックをした人物が姿を現した。 坪内だ。 「椎羅木と…織田と峰崎も一緒か。これは手間が省けた。」 「坪内さん?何か用か?」 そう言って守はトランプから目を離した。 遊んでいる最中に大人の邪魔が入るのは好きではないのだが…。 「呼び出しだ。君達全員、大広間に集合してくれとの事であるぞ。」 牢獄区入口付近 「………。」 虚ろな目をし、無言のまま覚束ない足取りで牢獄区から逃げるように出て来た夏美。 あたしは何で、こんなにしてまで戦闘員をやろうとしているんだろう。 守君も明彦君も翔君も…もう任務まで請け負ってたのに…、あたしはただ囚人を撃ち殺してるだけ。 「もう……嫌だな…。」 その時、 「夏美ー!」 背後からあたしの名前を呼ぶ声が聞こえた。 翔君だ。 「これから晩御飯食べに行くんだけどー、夏美も来ないー?」 わざわざあたしを晩御飯に誘うためにこんな場所まで来てたんだ…。 やっぱり何にも食べたくないけど…誘われちゃったからなぁ…。 「うん…良いよ。」 了承する事にした。 別に翔君と晩御飯を食べるのが嫌な訳じゃない。単に食欲が無いだけだ。 思えば翔君は、気が付けばいつも側にいてくれるようになった。 任務の時以外は…今みたいに食事に誘ってくれたり、暇な時はちょっとした雑談をしてくれたり……ボロボロのあたしの事を気遣ってくれる。 あたしが今こうして、ちゃんとした戦闘員になろうと頑張れているのは翔君があたしの心の寄り所になってくれているからなのかもしれない。
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