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「だからって……何も夏美を連れていく必要無い筈でしょう!?」
「そうかしら?強制的にでも戦場へ連れていく事は、花村さんにとっても良い事だと思うけど?」
「………ッえ…?」
夏美を強制的に戦場へ放り込むのが…良い事?
「ぜ、全然意味分かりませんよ!!この期に及んで…ふざけてんですか!?」
と、正直な感想を述べた。
未だに大広間に残っている戦闘員が何事かとこちらへ振り向いているが、そんなもの気にも止めない。
「……分からないかしらね。」
だが本田は極めて冷静だった。
まるで教師が聞き分けの無い生徒を宥めるかのような口ぶりだ。
「今のままじゃ花村さんのトラウマは一生治らないわ。でも実際に戦場に駆り出されれば、何かが変わるかもしれない。
…賭けてみる価値はあると思わない?」
…撃たなければ撃たれる戦場ならば、無抵抗な囚人をただ無駄に撃つよりは効果が期待できる。そう言いたいのだろう。
「でも…それでも駄目だったら夏美が危険に晒されます!」
「……中島君、戦闘員の仕事はいつだって死と隣り合わせ。分かってるでしょ?トラウマだから言って花村さんを特別扱いするわけにはいかないわ。」
本田はそう言い捨てると、翔に背を向けて歩き出した。
「あ…本田さん!!まだ話は…!」
呼び止めようとするも、無視。振り返る気配は微塵も無い。
………くそ…!
…夏美……ッ…!
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