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翔は自室に戻るとすぐに冷蔵庫を開き、缶ビールを1本取り出した。
ちなみに翔の冷蔵庫の中身は大量の缶ビールで埋め尽くされている。未成年は禁酒という法律など完璧に無視だ。
翔は小さな溜息をつき、ソファーに勢いよく腰を落とした。
その時、
「ばぅばぅばぅ!!」
背後からソファーの背もたれを飛び越え、翔の頭にボディプレスをかました柔らかい物体が。
飼い犬のゴールデンレトリバー、大豆だ。
「ちょ…何すん…。」
「ばぅばぅ!!…ハッハッハッハッ…。」
飼い主様の言葉などシカトしている大豆。
大豆なりの愛情表現か何かなのだろうが…とりあえずビールは飲ませて欲しい。
「尻尾とか振らなくていいからー…どいてー…重いー……。」
「ばぅ?」
大型犬の下敷きとなるのは…嫌では無いが、苦ではある。てか…きついよ。
その時
コンコン…
鼓膜を微かに震わせる、弱々しいノック音。
「あ、はーい!大豆、どいて!」
翔は強引に大豆を押し退け玄関の扉へと向かった。
そして、そこにいたのは…
「……夏美…。」
俯き、微かに体を震わせ、心境をそのまま表しているかのような絶望感を物語る表情を浮かべている…夏美が。
「どう…しよう…。」
恐怖に駆られた声。
理由は……他でも無い。
「あたしが任務なんて……無理だよ……翔君…。」
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