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その後、守はジョディに追われデッキ中を走り回った。
止まったら殺られる、というプレッシャーを胸に抱き続けながら。
周囲の者は皆こちらに注目していた。
…まあ胸毛&脇毛ぼーぼーの女性用水着姿の中年男が、少年を追って爆走しているのだから無理もない。
このような珍景、そうそう見られないだろう。
「ハァッ…ハァッ…ハァッ……くそ…!」
着用している物が厚いコートと水着(女性用)では身軽さがまるで違う。
危ない形相のジョディとの距離はじわじわと狭められていった。
デッキの外側に設置されている冊に沿って更に駆けて行く。
そして後部デッキへ辿り着いた、その時だった。
「…っと!」
無意識に足が止まる。
ここからは遥か遠くの後部デッキの端に、仲の良さそうに並ぶ翔と夏美の姿があったのだ。
2人は何か雑談をしながら景色を眺めている。……中々良いムードだ。
あの雰囲気を自分と女もどき(ジョディ)の追い掛けっこでぶち壊しにするわけにはいかない。引き返そうと回れ右をした…その時。
「Catch the MAMORUーkun!!」
すげぇテキトーな英語を口走りながら守目掛けて跳躍するジョディ。
「うわッ!」
咄嗟に身構えるも…抵抗にすらならなかった。
気が付けば守は仰向けに転倒し、その上にジョディが馬乗りになっていたのだ。
やばい!身動きが取れねぇ!
「さぁ、遊びましょ~ね~。守く~ん。」
「ぅぎゃああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
絶叫。
寒気と恐怖が…頂点に達した。
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