29145人が本棚に入れています
本棚に追加
/568ページ
その時、
ピリリリリリ…ピリリリリリ…
携帯電話の着信音が鳴り響いた。
「…私か?」
華里奈がポケットから、あの真っ黒い携帯電話を取り出したが…違う。着信らしき表示はなかった。
ということは…
「あ、俺だ。」
案の定、守の携帯に新着メールの表示が。
差出人は…翔だ。
メールの内容は、
『相談したいことあるからー、1人でデッキの後ろまで来てくれるー?』
華里奈と別れ約束通り後部デッキへ足を運んでみると、翔が1人で突っ立っていた。…夏美はどこへ行ったのだろうか。
「翔!」
駆け足で翔に近付く守。
「やぁー、待ってたよー。」
翔はにこやかに右手を挙げ、言った。
「相談って何だよ?」
「うん。ちょっと夏美の事でねー。」
夏美の事?
…おい、まさか相談って…恋愛についての相談じゃねぇだろうな…。
一瞬そう思ったが、どうやらその予想は誤りだったらしい。
「守は知ってるよねー?夏美のトラウマの事ー。」
「…え?」
そして俺は初めて聞かされた。
夏美の人殺しに対するトラウマが解消しきれていないにも関わらず強制的に任務に連れて来られていた事と、その理由を。
「…待てよ。てことは何か?囚人が減らされて困るから無理矢理任務に向かわせて……あわよくばトラウマを解消できれば良いって…そんな理由でかよ!?」
無茶苦茶だ…そんなの…。
夏美のトラウマの事は勿論知っていたが、任務に駆り出されたという事はトラウマは解消されたものとばかり思っていた。
「それで守に相談なんだけど…。」
「あ、ああ…!何だよ?」
「……その…俺、夏美を助けようと思ってるんだけど……手伝ってもらえないかなー…って思って…。」
最初のコメントを投稿しよう!