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戦闘員を乗せたトラックは三原山を包囲するように停車した。
日が落ち、辺り一帯が暗闇と静寂に包まれた頃。
更にしばらく待機。
そしてようやく、午後10時を回った。
任務開始だ。
防寒具に身を包んだ戦闘員達は武器を手に一斉にトラックから飛び出した。
各班が別々の地点から攻め込みに行くため、周囲に見えるのは同じ班の者のみだ。
遊歩道は通らず、雪が積もった道無き道を走る。
「ぅおッと!」
その時守は雪に足を取られ、よろけた。
慣れない足場を走る事はこの上ない困難を要する。
「守!しっかりしろ!」
と、華里奈。流石は戦場慣れしているだけの事はある。その動きは軽快そのものだ。
「そろそろゴーグル付けとけ。いつ奴らに出くわすか分からんぞ。」
古賀はそう言うと同時に全員が赤外線ゴーグルを着用した。これがなければ闇ばかりの山林帯を鮮明に見渡せない。
また今回は大人数での任務なので防弾チョッキは無し。1発足りとも被弾するわけにはいかない。細心の注意を払わなければ。
「古賀さん。俺達はこの辺で。」
しばらく走ると、木村が口を開いた。
木村の言う俺達とは木村自身と夏美の事だ。
この2人はスナイパーであるため後方で敵を狙撃する役目を担っている。
古賀が頷き了承のサインを送ると木村は夏美を連れて、どこか別の場所へと走り去った。
夏美が振り返る瞬間、翔に不安げな眼差しを向けたように見えたのは…気のせいだろうか。
「おい、翔。夏美はどうすんだよ?」
翔に接近し、小声で話す守。
仕方ないとはいえ離れてしまっては夏美の助けになることはできない。
すると翔も小声で、こう返答した。
「大丈夫だよー。木村さんにも協力してもらえたからー。」
確かに夏美の側にいれる木村ならば効率的だ。
だが翔自身、不安に駆られているのは間違いないだろう。すぐ近くにいてあげられないという事だけで。
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