崩れ落ちる平穏

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ガチャ その時、玄関の扉が開かれた。 そこにいるのは… 「おや、守君に舞さんじゃないですか。」 「……………あ?」 玄関を目にして、硬直する守。     何だ?これは 首から血を流した母が………………倒れている。 …………死んでいる? 「ふむ、外出しているという話は本当でしたか。」 頬をポリポリと掻きながらこちらへ近付いてくる警察官。 ……………警察官? 首を真横に傾ける。 すると、脱力し、大粒の涙を流している舞が、冷たい玄関タイルに座り込んでいた。 「玄関先で、母親が家族と無理心中なんてシチュエーションが良かったんですけどね。」 頭ん中が真っ白になる感覚。 思考停止。 え?無理心中?シチュエーション? 何言ってんの? 「まあ、今からでも遅くはない。まずは…守君から逝っちゃいましょうね。」 凍結された脳でギリギリ理解できるのは、 警察官が持っている血に濡れたナイフが、 俺に向かって、 一直線に伸びてくる光景だけだった。
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