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その時
「ぐぅっ…!」
突然警察官が転倒した。
何故なら…
「…!………母さ…。」
歯を食いしばり、激痛を堪え、必死としか言い表せない形相の母が警察官に背後から飛び掛かったのだ。
…首から鮮血を、垂れ流しながら。
「母さん……母さん!!!」
停止していた脳が一気に活性化する。
その瞬間、母が口を開いた。
逃げなさい
どんな音でも掻き消されてしまいそうな本当に微かな声だが、確かに聞こえた。
逃げなさい、と。
壁一面に飛び散った血を見てみる。専門的な知識が無い守でも分かる程の凄まじい出血量。
これでは失血死は免れないだろう。
それにも関わらず……朦朧とする意識の中、我が子を守ろうと必死の母親。
「……姉貴、逃げよう。」
「え!?」
「ボサッと…すんな!逃げるんだよ!」
俺は舞を無理矢理立ち上がらせ、その手を引き、玄関を飛び出した。
視界が歪む
泣いてるのか。俺。
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