崩れ落ちる平穏

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凄まじい爆音と吹き抜ける爆風。 「きゃああああ!!!」 舞が甲高い悲鳴をあげた。 手榴弾1つでここまで威力があるとは思わなかった。 「ちょっと火力強すぎたか…?怪我は無いかい?お二人さん。」 男は何もなかったかのように立ち上がった。 「…ぁ……。」 声が出ない。 正直、泣きたかった。 一体何度死ぬ思いをすれば良いのだろうか。 「………………。」 舞は既に放心状態だ。 その時、 「古賀君!!」 道の先からマシンガンを両手で持って走ってくる武谷の姿が見えた。 「おっ、華里奈の前にこっちが来たか。」 男は武谷に手を挙げて合図した。どうやら味方のようだ。 「助かったよ智子ちゃん!1人で2人の護衛すんのって案外キツいんだな!」 「………。」 無言で近付いてくる武谷。 そして、男の目前まで接近した。瞬間、 ゴスッ! 「ぐおッ!?」 武谷がマシンガンの先端で男の頭を殴った。見てるだけでも痛みが伝わってきそうな程の力で。 「あれほど街中で手榴弾を使うなと言った筈よ!何をやってるの!?」 すると…叱責し始めた。 「……ってぇ…。あの場合しょうがなかったんだって!そんな怒りなさんな、智子ちゃん!」 …ん? 智子ちゃん? 武谷の名前は……洋子だった筈。 「なあ、あんた、武谷 洋子だよな?」 「え?」 武谷は突然の守の問い掛けにキョトンとしている。 「いや…智子って…。」 「あ、まだ言ってなかったわね。武谷 洋子は偽名よ。偽名。」 「…偽名!?」 予想しなかった返答に動揺してしまう。てっきり名前を呼び間違えただけだと思ったからだ。 「学校に潜入する上で必要だったのよ。私の本名は本田 智子。覚えといてね。」
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