崩れ落ちる平穏

14/19
前へ
/568ページ
次へ
「こっちの敵は全て排除したわ。行きましょう。」 一行は路地の奥へと歩き始めた。 「な…なに…?私達…助かったの…?」 守の背中で舞が震える声で言った。 「ええ。もう大丈夫よ。」 と、本田。その時 「…そうだ……母さん…母さんは!?」 守はふと思いだした。 母の命が狙われている事を。 別れ際は確かに生きていた。 我が子を逃がそうと、大怪我を負いながらも必死に戦っていた。 早く…早く戻らなければ…! だが、 「椎羅木君………お母さんは…。」 「大怪我してんだよ!早く助けないと…」 「椎羅木君!!!」 本田は大声を張り上げ、守の声を遮った。 「……な…何だよ…。」 脳裏に最悪の考えが浮かぶ。 あの出血量。 奇跡でも起きない限り、助かる筈が無い。 そしてこの最悪の予想は……的中した。 「あなた達のお母さんは……残念だけど…。」 やっぱりか。 ここまでピッタリ予想が当たると、何とも妙な感じだ。 勿論、覚悟はしていた。 なのに……一粒の水が頬を流れて行く。 背中で舞が泣いているからだろうか。 否定したかった現実を、突き付けられたからだろうか。 とにかく際限無く悲しかったのは確かな事で、 悪い夢だと思い込みたかったという気持ちも確かだった。 現実だと、分かっていても。
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29147人が本棚に入れています
本棚に追加