崩れ落ちる平穏

17/19
前へ
/568ページ
次へ
「あ、おい…。」 余りにも短い挨拶だったため華里奈を引き止めようとするが… 「………。」 …無視。 さっさと足早に歩いていってしまった。 「無愛想ね。あの子。」 「おう姉貴。落ち着いたか。」 「…なんとかね。もう慣れたかも。」 「慣れた?」 「この状況によ。」 未だに守に背負われている舞は大きな溜息を吐いた。 「ところで姉貴。もう大丈夫なら降りてくんねえか?」 「…何でよ?」 「…姉貴重い。」 「椎羅木。」 気力を取り戻した舞との会話を続けていると、突然華里奈が口を挟んで来た。 それも何やら不機嫌そうな表情で。 「な…何…。」 「早くしろ。」 それだけ言うとすぐに振り返り、またもや歩いていってしまった。 「すまんな。」 華里奈と入れ代わるように今度は男が近づいてくる。 「あいつ、あれでも根は優しい奴なんだ。大目に見てやってくれ。」 「……はぁ…。」 気の抜けた返事を返す守。 「それじゃあ先を急ごうお二人さん。ボサッとしてる暇は無いぞ。」 「ああ……えっと…。」 「ああ、そうだったな。」 ふと何かを思いだし、両手をポンと合わせた。 「俺は古賀 浩司(こが こうじ)。よろしくな!」 と、その時。 「遅い。」 いつの間にか戻って来ていた華里奈がまたもや文句を一言。 「あーすまんすまん。そんなカッカしてたら皺増えるぞ?」 と、古賀。 「うるさい。」 ………根は優しい…のか? 「………。」 本田は少し離れた場所でこのやり取りを、ほんのり温かく見守っていた。
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29147人が本棚に入れています
本棚に追加