崩れ落ちる平穏

18/19
前へ
/568ページ
次へ
華里奈、古賀、本田と共に長かった路地を抜けると、人っ子1人いない殺風景な大通りに出た。 「流石に奴らも大通りで暴れる気は無いようね。椎羅木君、あのワゴン車まで走って。」 本田の指差す方向。そこには、ここから100メートルは離れていると思われる電柱の側に停められている一台の白いワゴン車があった。 「大通りっつってもここにゃ廃屋しか見当たらんし、まだ敵がいないとも限らん。警戒は怠るなよ。」 古賀はそう言って先頭に立ちはだかった。 「私が椎羅木君達を車まで連れてくわ。古賀君と華里奈さんは警戒を…。」 「待って。」 本田の言葉を遮る華里奈。 「椎羅木は私が連れていく。私が持ってるの刀だけだから。」 刀では例え遠くに敵を発見したとしても対応に間に合わない可能性が高い。 当然と言える判断だ。 「……分かったわ。他の皆はどこに?」 「逃げ道の確保に移ってる。」 「じゃあここにいるの俺達だけ?冗談じゃないよ、全く。」 古賀がやれやれと両手を小さく挙げた。 だが文句を言っていても仕方が無い。 古賀は一足先にワゴン車へと走り出した。 「走れ。」 それに続き、華里奈が守と舞の背を押して走り出す。 最後に、本田も。 「ちょっと待って…早い…。」 70メートル程走った時点で舞の息は上がりかけていた。 「うるさい、走れ!」 「……ッ…!」 その時、先頭を走っていた古賀が素早く身を屈め、ワゴン車の下に滑り込んだ。 爆発物か何か…危険な物が仕掛けられていないか確認するためだ。 古賀は爆弾が無い事を確認すると片手を上げ、守と舞を連れて走っている華里奈に合図を送った。
/568ページ

最初のコメントを投稿しよう!

29147人が本棚に入れています
本棚に追加