狂い出す運命

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「ごめん。武谷先生の所行かないと。」 「分かった分かった。武谷うるさいから、早く行った方が良いぞ?」 「うん。ごめんね。」 急ぎ足で職員室へ向かって行く美奈。 「さて、義一は…と。」 義一を捜すべく、4組のクラスを覗く。 「義一!」 すると義一が雑巾を持ったまま近付いてきた。掃除中のようだ。 「早く帰らないか?」 「すまん。この後部活だ。」 義一は野球部のエースピッチャーだ。ちなみに守は帰宅部だ。 「マジかよ…。じゃあしょうがないか。じゃあな。」 「ああ。じゃ。」 仕方ないので寂しく1人で帰ることにした。下駄箱で靴に履き変え、校門を出ようとした。その時、 ドンッ 誰かにぶつかった。 「ッてぇ…。あ…校長…。」 守の目の前には50代後半と思われる男性が立っていた。この男性はこの学校の校長、名を芝崎 利三(しばさき としぞう)という。 「えと、すみません。」 とりあえず頭を下げる。 「別に構わないよ。気をつけなさい。」 芝崎はとても温厚な性格で、いつも笑顔が絶えない。特に生徒からの評判が良い。 「ほんと、すみません。では。」 「あ、椎羅木君!」 守が再び歩き出した瞬間、芝崎に引き止められた。 「何ですか?ていうか、何で俺の名前…。」 「名札見たんだよ。それより、忘れ物とかはしてないかい?」 「え……ありませんよ。(…多分。)」 「なら良いんだ。気をつけて帰りなさい。」 芝崎はそう言って去って行った。 「……学校に戻ってこられても困るからね。」
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