歩むべき道

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「なぁ、そういえば…姉貴は?それくらい教えてくれたって良いだろ。」 スプーンを皿に戻す華里奈。そして、こう言った。 「椎羅木 舞は別室で休んでる。心配ない。」 「……ふぅん。」 休んでいる…ということは無事なのだろう。一先ず安心だ。 だがもう一人、どうしても安否を確認したい人物がいる。 「じゃあ…母さん…は?」 聞いたところで返される言葉は分かっている。 しかし聞かずにはいられなかった。 そして、返答は… 「死んだ。」 なんとストレートな答えだろうか。 残り微かな希望をいとも簡単に打ち砕く、無情で残酷な言葉。 何故だか今の守にはとても心地の良い言葉だった。 「こちらのミスだ。済まない。」 真っすぐ守の目を見て話す華里奈。 本田に母の安否を尋ねた時には…少なくとも本田は「残念だけど。」としか言わなかった。 それでは生きているか死んでいるかなど分かるわけが無い。 分かりたくもない。 だが華里奈は違った。 母の死を告げる時も、謝る時も、真正面から下手な小細工無しに話してくれた。 これで、割り切れる。 母は死んだ…と。 「本当に…済まない…。」 「いや、大丈夫だ…。……ありがとな。」 声が震える。 悲しいのか? 涙は出ない。 悲しい訳じゃない。 なら、今俺を支配しているこの感情は何だ? これは… 憎しみ…?
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