歩むべき道

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「……守…何言って…。」 余程驚いたのだろう。舞の声が掠れている。 「姉貴はちょっと黙って聞いててくれ。」 「守…!」 その時、本田が立ち上がり守の目前に歩み寄った。 「…椎羅木君、本気?」 本田も若干、耳を疑ったようだ。表情で分かる。 「本気だよ。……本田…さん……頼む!」 守は頭を深く下げた。 「…じゃあ、何で?志望動機を聞こうじゃない。」 …そんなの決まっている。 缶コーヒーを握っている右手に力が入る。 ペキパキとスチール缶が少しずつ潰れてゆく。 「……奴らに、復讐したい。」 ベコッ!! その瞬間、スチール缶が握り潰された。 飲み口から少量のコーヒーが飛沫となって舞い上がる。 「……復讐…?」 「…ああ。」 理不尽な理由で日常生活を奪われ 理不尽な理由で命を狙われ 理不尽な理由で母を奪われ…。 誰が許すことなどできようか。 「俺達が日常に戻れるまでで良いから…頼む…!」 「…でもね…。」 一体どのように断れば良いのか。本田はそればかり考えていた、その時だった。 「いいんじゃないか?言う通りにしてやっても。」 「…!古賀君!?」 「志望動機としては十分だと思うぞ俺は。ただし、守君。」 いつの間に飲み干していたのか、古賀は空のペットボトルをごみ箱へ投げ捨てながら言った。 「君には人を殺す覚悟があるのか?」 「…!」 意気込みだけではただの邪魔だと言う事か。 だが、愚問だ。 「当たり前だろ。」 奪われた物を考えれば奴らの命など簡単に奪える。 そんな気がした。
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