真夜中の迷宮

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ドアに歩み寄り、覗き穴を覗いてみる。が、 (……見えない…?) 見えたのはドアの向こうの人物ではなく…ただの暗闇。 どうやらこの覗き穴、壊れているようだ。 「…勘弁してくれよな…。」 ドンドンドン!ドンドンドン! 未だに鳴り止まないノック。 いっそのこと居留守を…。 ドンドンドン!ドンドンドン!ドンドンドン! いや、流石にそれはやめておこう。もしも急ぎの用事か何かだったら取り替えしのつかない事になってしまうかもしれない。 守は意を決し、鍵を開けた。 カチッ 瞬間、 ガチャッ!! 「ぅおッ!?」 ドアが乱暴に開かれた。 否、完全には開いていない。 少しだけ……丁度、握り拳1つ分なら入れそうなくらい開いていた。 一般的な家やマンションの玄関と同じく、このドアは鍵と短い鎖の二重ロックが施されている。 鍵は解除したが鎖の方は掛けたままにしていため、中途半端に開いてしまったのだ。 「あの…どちらさんでしょうか…?」 恐る恐る開いたドアの隙間から外を覗いてみる。…そこには…ドアノブを掴んだまま俯き、無言で立ち尽くしている華里奈がいた。 それはまるでホラー映画のよう。 夜中、自室の前に女性が1人立ち尽くしてたら貴方はどう思いますか? ジャララッ! 「…ッわ!」 その時華里奈の右手がドアを開けさせまいとピンと張っている鎖を掴んだ。 怖い。怖いよ華里奈さん。 恐怖のあまりドアを思い切り閉めて貴方の右手を挟もうとしている衝動を抑えている俺の身にもなってみてくださいよ。 そして、華里奈の口から発せられた言葉は…この状況からしては余りにも意外なものだった。 「……助けてくれ…。」
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