真夜中の迷宮

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その後、華里奈に急かされ満腹にならないまま寿司屋を後にした。 「行くぞ。早く帰って寝たいんだ私は。」 何故か倒置法を使っての華里奈の発言。主語を強調することに何か意味があるのだろうか。 「あ、おい。」 「何だ?」 美しい夜景をバックに足早に歩いていく華里奈。 だが、 「そっち道違うだろ。」 「……え?」 出た。方向音痴。 「俺、帰り道覚えてるから。着いてこいよ。」 そう言うと守は華里奈とは反対方向に歩き出した。 「………チッ!」 舌打ちやめろ。 不機嫌としか言えない華里奈を3歩後ろに20分。 狭い路地の奥の目的の場所に到着……いや、帰って来た。 オカマ・バー、『ジョディのおうち』へ。 ネーミングセンスのカケラも無い。という正直な感想は胸の内にしまっておくとして、1つ問題がある。 「…また…あのオカマ達と顔合わせなきゃならねぇのか…。」 さっきは華里奈が撃退してくれたが今度は助かるとは限らない。 もしあの後、あのままやられていたら………………………いや、考えるのはやめよう。せっかく食べた寿司が逆流してしまいかねない。 「椎羅木。心配するな。奴らには何もさせない。」 守の心境を察したのか、華里奈が優しげな言葉をかけて来る。 「華里奈…。………………………!」 そんな華里奈に少々涙ぐみながら振り返ると、その瞬間言葉を失った。 華里奈の右手には……鉄パイプが握られている。 その鉄パイプを一体何に使うのか、俺には全然分からない。 こんな物をどこで拾ったのかも分からない。 俺は華里奈に促されるがままに『ジョディのおうち』へと入った。
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